おわりに
これまで既に述べてきたように、世界的にインターネット、電子商取引、電子決済等が急速に進展し、2000年を前に社会構造の変革が迫ってきている。
この様な社会の企業においては、国際的な企業情報の一元化、共有化、価値の共有化が図られようとしている。
従来の組織は、量産効率性を重視したピラミッド型組織で行われてきた。しかし、情報化社会では、一人一人が中心となり、組織の水平化が進展してくる。また、資本も従来の物、金、顔から人間、情報が資本となる。あふれる情報からいかに質の高い情報を集めるかが重要となってくる。
我が国の舶用工業においては、最近の円安による輸出船の受注はおおむね順調に推移しているが、内航船、漁船はより一層厳しい状態になっており、舶用工業製品の値戻しも進んでいない状況にある。さらに国際競争力の確保、労働者の高齢化の問題等舶用工業をとりまく環境の変化を踏まえ、今後とも国内の基幹産業として存立し、舶用工業として国際的に発展していくためには、顧客ニーズの変化に即応し得る高度情報化の推進、国際競争力の激化に対応し得る更なる強化を図る必要がある。
このために、受注、開発、設計、精算、検査、等製造業に係わる企業活動についての全情報の一元化を押し進め、品質・生産性の向上が可能となる生産・調達・運用支援統合情報システム(Continuous Acquisition and Life−cycle Supprt)の導入に向けた取り組みが必要となってきている。
すでに、我が国の造船を始め各産業においてもCALS対応がキー・ワードとして高度情報化に向けた体制が整いつつあり、この様な社会環境の基、我が国の舶用工業として、特に造船CALSの先行に速やかな対応が出来るだけの体制を早急に整えておく必要がある。
先に実施したアンケート調査からわかるように、情報化の推進にあたっては、多額の投資を伴うためトップダウンによる推進が重要である。
情報の基盤をつくる必要はあるが、企業にとって「情報化のための情報化投資」では意味がなく、情報化投資は、仕事のやり方、組織、取引形態の変革の手段として捕らえるべきである。中小企業においては、人材の不足をはじめとする情報化基盤の脆弱さ、使いやすいソフトウエアの不足により、充分にご情報システムを使いこなすことができず、大企業に比べ情報化が遅れているのが現状である。そのため、1)人材育成の強化、2)インフラ整備のための普及・啓蒙体制の促進を図る必要がある。
基礎的な情報処理・活用能力を身につけることができる環境整備に努めると共に高度情報化社会の発展を支える人材の育成、実務者の育成に努めることが大切である。
高度情報化社会の実現のためには、情報機器がネットワークに接続され、ユーザーがこれを用いてあらゆる情報を自由に交換、検索でき複数のコンピュータを用いて情報処理できる環境が必要となる。このためには、単に情報機器がネットワークで接続され、信号のやりとりができるだけでなく、データの内容に関する標準化、データベースに必要となる
前ページ 目次へ 次ページ